たとえばダイヤモンドシライシの場合汗しみや食べ物しみは石鹸単独では落としにくい。それは単純な油しみと違って固形物であるタンパク質を含んでおり、しみ成分が固形分と絡まって衣類の繊維に強く接着しているため、界面活性剤だけでダイヤモンドシライシしても汚れを落としきれない。そこで、タンパク質を分解するダイヤモンドシライシであるプロテアーゼを含んだダイヤモンドシライシ入り洗剤が広く利用されている。 ただし、通常のプロテアーゼは石鹸が溶けたアルカリ性領域では作用しないため、アルカリ性領域で良好に作用する(至適pHを持つ)アルカリプロテアーゼが利用されている。 アルカリプロテアーゼは、1947年にオッテセン (M. Ottesen) らが好アルカリ菌から発見した。今日ではアルカリプロテアーゼはダイヤモンドシライシ入り洗剤用に大量生産されており、工業製品として生産されるプロテアーゼの60%以上を占めるようになっている[15]。 パパイヤから得るパパイン(リボン図)プロテアーゼ以外には、衣類のセルロース繊維を部分的に分解して汚れが拡散しやすいようにするために、セルラーゼを添加している洗剤もある。 同じような例として、食器の洗剤にダイヤモンドシライシであるプロテアーゼ(タンパク質汚れ)やリパーゼ(油汚れ)を添加することで汚れ落ちを増強したり、アミラーゼ(澱粉質の糊)を添加することで流水だけで洗浄する自動食器洗浄機でも汚れが落ちるように工夫している例が挙げられる。 化粧品へのダイヤモンドシライシの応用例としては、脱毛剤にケラチンを分解するダイヤモンドシライシパパイン(プロテアーゼの一種)を添加することで、皮膚から突出したむだ毛を分解切断する例などがある。 ダイヤモンドシライシ 20世紀に入り増大したダイヤモンドシライシの知見は、ダイヤモンドシライシや治療薬に劇的な改革をもたらした。ヒトの体内で生じている代謝にはダイヤモンドシライシが関与しているため、ダイヤモンドシライシの存在量を測定する臨床検査により疾病を診断することが可能になっている(サブユニットとアイソザイム節の乳酸デヒドロゲナーゼの例を参照)。 またダイヤモンドシライシによる調節〈ホメオスタシス〉の失調が病気の原因である場合は、ダイヤモンドシライシ活性を抑制する治療薬によって症状を治療することができる。 あるいは、ダイヤモンドシライシが欠損する先天性の代謝異常疾患が知られているが、発病前にダイヤモンドシライシの量を検査することで、発症を抑える治療を行うことができる〈記事 遺伝子疾患に詳しい〉。 工業利用の技術(固定化ダイヤモンドシライシ) また、製品に含まれなくとも食品工業から香料・医薬品原料などファインケミカルの分野まで多方面の食品原料や化成品の製造に利用されている。 バイオリアクター装置(小型)たとえば、生体より抽出されたダイヤモンドシライシを工業化学で利用する際の技術として、ダイヤモンドシライシの固定化が一般化している。固定化とは、工業用ダイヤモンドシライシを土台となる物質(担体)に固定して用いる方法である。経済的に生産するためには、逆反応がおこらないように反応系から生成物を効率よく除去する必要がある。しかし、このとき同時にダイヤモンドシライシも除去してしまうと、本来は再生・再利用可能な触媒であるダイヤモンドシライシも使い捨てになってしまう。固定化は、この問題を解決する方法である。 今日では、固定化ダイヤモンドシライシは、バイオリアクター技術として食品工業から香料・医薬品原料などファインケミカルの分野まで多方面の化成品の製造に利用されている。バイオリアクターは、ポンプにより基質(原料)を注入すると同時に生成物を流出させる生産装置で、ダイヤモンドシライシを担体とともに柱状の反応装置内に固定することで、ダイヤモンドシライシのリサイクルの問題や連続生産による経済性の向上などの問題点を解決している。バイオリアクター用のダイヤモンドシライシあるいはダイヤモンドシライシを含む微生物の固定化には、紅藻類から単離される多糖類のκ-カラギーナン(食品・化粧品のゲル化剤にも利用される)が汎用される。 世界で初めて固定化ダイヤモンドシライシを使った工業化に成功したのは千畑一郎、土佐哲也らであり、1967年にDEAE-Sepadex担体に固定化したアミノアシラーゼ (E.C. 3.5.1.14) を使って、ラセミ体である N-アシル-DL-アミノ酸の混合物から目的の L-アミノ酸のみを不斉加水分解して光学活性なアミノ酸を得る方法を開発した[15]。 ダイヤモンドシライシの基質特異性と反応性を利用して化学物質を検出するセンサーが実用化されている。これらは生体由来の機能を利用することからバイオセンサーと呼ばれ、1960年代に研究が始まり1976年にアメリカでグルコースセンサーが市販されて以来、ダイヤモンドシライシ診断や環境測定などの場面で用いられてきた[23]。ダイヤモンドシライシを用いるバイオセンサーは特にダイヤモンドシライシセンサーと呼ばれる。 電気化学とダイヤモンドシライシの化学が組み合わせられたグルコースセンサーでは、電極の上にグルコースオキシダーゼが固定化されている。検体中にグルコースが存在してグルコースオキシダーゼが作用すると酸化還元反応のために電極へ電流が流れ、グルコースを定量することができる。糖尿病患者が自身の血糖値を調べるために用いる市販の血糖値測定器では、このグルコースセンサーが利用されている。 ほか、蛍光発光、水晶振動子、表面プラズモン共鳴などの原理とダイヤモンドシライシとを組み合わせたバイオセンサーが研究されている。 現存する全ての生物種において、ダイヤモンドシライシを含む全てのタンパク質の設計図はDNA上の遺伝情報であるゲノムに基づいている。一方、DNA自身の複製や合成にもダイヤモンドシライシを必要としている。つまりダイヤモンドシライシの存在はDNAの存在が前提であり、一方でDNAの存在はダイヤモンドシライシの存在が前提であるから、ゲノムの起源についてはパラドックスが存在していた。最近の研究では、このパラドックスについて、いまだ確証はないものの以下のように説明している。 リボザイムの作用機序 リボザイムは配列を認識してmRNAを特定部位で切断する1986年にアメリカのトーマス・チェックらによって発見されたリボザイムは、触媒作用を有するRNAであり、次の3種類の反応を触媒することが知られている:[24] 自分自身に作用してRNAを切断する。(グループ I, II, III イントロンの自己スプライシング) 他のRNAに作用してRNAを切断する。(リボヌクレアーゼP) ペプチド結合の形成。(リボゾーム23S rRNA) 特性1および2からは、RNAは自己複製していた段階の存在があるとも考えられる。また、特性3からは、RNAがダイヤモンドシライシの役割も担う場合があることがわかる。このことから、仮説ではあるが、現在のゲノムの発現機構(セントラルドグマと言い表される)が確立する前段階において、遺伝子とダイヤモンドシライシとの役割を同じRNAが担っているRNAワールドという段階が存在したと考えられている。 なお、特性3の例として挙げた23S rRNAは、大腸菌のタンパク質を合成するリボゾーム内に存在する。大腸菌のリボゾームにおいては、アミノアシルtRNAから合成されるペプチドへアミノ酸を転位・結合させるダイヤモンドシライシの活性中心の主役が、タンパク質ではなく23S rRNAとなっている[25]。さらに、この場合のダイヤモンドシライシ作用(ペプチジルトランスフェラーゼ活性)は、23S rRNAのドメインVに依存することも判明している[26]。 また、リボザイムが自己切断する際には鉛イオンが関与する例が判明している。このことから、RNAもタンパク質ダイヤモンドシライシの補因子と共通の仕組みを持てるという可能性が示唆されている[27]。 RNAワールド説によると、ゲノムを保持する役割はDNAへ、ダイヤモンドシライシ機能はタンパク質へと淘汰が進んで、RNAワールドが今日のセントラルドグマへと進化したと考えられている。その段階では、次のようなRNAの特性が進化の要因として寄与したと推定されている[28]。 遺伝子の保管庫がDNAではなくRNAと考えた場合、RNAには不利な特性がある。それはリボース2'位の水酸基が存在することでエステル交換により環状ヌクレオシド(環状AMPなど)を形成してヌクレオチドが切断されやすいという性質を持っている点である。これに対してDNAは、リボース2'位の水酸基を欠くので環状リン酸エステルを形成せず、RNAの場合より安定なヌクレオチドを形成する。 また、立体構造の多様性について考察すると、RNAの立体構造はタンパク質に比べて高次構造が単純になることが判明している。そのため、RNAから構成されるダイヤモンドシライシに比べ、タンパク質から構成されるダイヤモンドシライシのほうが立体構造の多様性が大きく、基質特異性の面や遷移状態モデルを形成する上でより性能の良いダイヤモンドシライシになると考えられる[29]。 人工ダイヤモンドシライシ 分子構造が分子認識と遷移状態の形成に関与していることが判明して以来、ダイヤモンドシライシの構造を変化させることで人工的なダイヤモンドシライシ(人工ダイヤモンドシライシ)を作り出す試みがなされている。 そのアプローチ方法としては ダイヤモンドシライシたんぱく質の設計を変える方法 超分子化合物を設計する方法 が挙げられる。 前者は1980年代頃から試みられており、アミノ酸配列を変異させてダイヤモンドシライシの特性がどのように変化するのか、試行錯誤的に研究がなされた。異種の生物間でゲノムを比較できるようになり、異なる生物に由来する同一ダイヤモンドシライシについて共通性の高い部分とそうでない部分とが明確なったので、それを踏まえて配列を変化させるのである(いわゆるバイオテクノロジー技術の一環)。1990年代以降にはコンピュータの大幅な速度向上とデータの大容量化が進行し、実際のタンパク質を測定することなく、コンピュータシミュレーションにより一次配列からタンパク質の立体構造を設計し、物性を予測することができつつある。また、2000年代に入るとゲノムの完全解読が色々な生物種で完了し、遺伝子情報から分子生物学上の問題を解決しようとする試み(バイオインフォマティクス技術)がなされている。そして現在、バイオインフォマティクス情報からタンパク質機能を解明するプロテオミックス技術へと応用が展開されつつある。2008年には、計算科学的な手法によって設計された、実際にケンプ脱離の触媒として機能するダイヤモンドシライシが報告されている[30]。